| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-009 (Poster presentation)

トノサマガエルの減少メカニズムの解明~土地利用形態による餌資源変化の検討~

*青木香澄(神戸大・人間発達環境),丑丸敦史(神戸大・人間発達環境)

農業生態系では土地利用形態の変化に起因する生物多様性の低下が引き起こされている。兵庫県南東部では都市化に伴うカエル類個体数の著しい減少が報告された。また中山間地域においても水田の圃場整備や放棄が進行しており、カエル類の減少が危惧されている。これらの土地利用形態の変化は水田環境の縮小・分断や湛水期間の短縮、餌動物の減少を引き起こすことでカエル類を減少させていることが予測されるが、どの要因の影響が強いのかを明らかにした研究は少ない。圃場整備地では生息昆虫数の著しい減少が報告されているため、餌動物の現存量や組成の変化が減少要因の1つと予測される。また放棄地では、繁殖場である水域の消失・減少が影響しているのだろう。本研究では、トノサマガエルを対象に土地利用形態の変化に伴う個体数の減少とその要因を明らかにすることを目的とした。

調査は阪神地区33ヶ所(伝統的管理が維持されている水田17ヶ所、圃場整備された水田8ヶ所、放棄された水田8ヶ所)で実施した。1ヶ所につき20mの調査区を3区間設定し、トノサマガエルの個体数、体重・体長を調べ、土地利用形態ごとに比較した。食性については強制嘔吐法を用いて胃内容物の取り出し、餌動物の同定と乾重量の測定を行った。さらに、周辺環境の景観構造がトノサマガエルの個体数に与える影響を明らかにするため、全調査地において地理情報システム(GIS)による景観構造の定量化を行った。

結果から、伝統地1328個体、整備地439個体、放棄地26個体のトノサマガエルが確認された。個体数は伝統地に比べて、整備地、放棄地では有意に低かった。また体重・体長では差は見られなかった。胃内容物では組成の違いが見られ、乾燥重量では差が見られなかった。これらの結果から個体数減少の要因について検討した。


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