| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-010 (Poster presentation)

放棄水田畦畔の植物多様性は再生するのか ―表層土壌からの再生ポテンシャル―

日置千絵*,丑丸敦史,内田圭,長井拓馬 神戸大学発達科学部

世界的に、管理放棄による半自然草地の減少に伴った植物多様性の低下が危惧されている。耕作放棄で失われた半自然草地の植物多様性の再生には、管理再開後の土壌シードバンクからの再生が重要であると近年多く議論されているが、多年生草本の優占する草地の植生の再生には、休眠状態にある地下茎等栄養生長器官からの回復も重要であると考えられる。一方で、管理再開には多大な人的・資金的コストがかかるため、それらを考慮し、管理再開すべき優先順位の高い放棄地を見極めることが急務となる。

以上を背景に、本研究では、兵庫県の放棄棚田畦畔15地点から採取した表層土壌(シードバンク+地下茎が含まれる)からの再生ポテンシャルを明らかにするとともに、①再生ポテンシャルを下げうる要因(放棄年数、放棄時植生、畦畔上の位置) ②再生を促進する環境(リター量、光量)について検討した。

撒き出し実験の結果、128種2852個体の植物の発芽が確認された。地下茎からの発芽として準絶滅危惧種であるスズサイコ等を確認した。

発芽種数を応答変数、放棄年数・放棄時植生・畦畔上の位置・寒冷紗の種類・リター・交互作用を説明変数として一般化線形混合モデルで解析を行った。結果、表層土壌からの発芽種数は放棄年・木本の優占・リターの被覆の増加によって減少し、畦畔下部と遮光率50%の処理で増加した。

Jaccard非類似度指数を用いて多次元尺度構成法(MDS)でプロットをしたところ、畔内・畔間で発芽種組成のばらつきがあることが確認された。

本研究の結果から、放棄水田畦畔で管理再開する際には、再生見込みの小さい林縁部や長期放棄の畦畔は除き、多様な生物を保持する畦畔を選定し管理すべきであることが分かった。


日本生態学会