| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-012 (Poster presentation)

Indicator valuesを用いた湿原健全性の評価

*イ・アヨン(北海道大学農学院),冨士田裕子(北海道大学FSC植物園),小林春毅(北海道大学FSC植物園)

生態系の重要性の評価とその保全のため、世界では生態系健全性(ecological integrity)を評価するためのインディケーターが開発されつつある。湿地生態系は、多様で貴重な動植物の遺伝資源を有し、気候変動における緩衝作用を持つなど、地球環境にとって重要な生態系として、湿地の健全性を評価する様々なインディケーターが開発・提案されている。しかし、日本においては、湿地生態系の評価インディケーターは、まったく検討されてこなかった。

そこで、本研究では我々が構築した北海道湿地植物データベースと既存の健全性評価法を参考に植物をインディケーターとした湿地の健全性の評価手法の検討を行った。植物を用いたのは特にインディケーターのなかでも植物が環境要因をよく反映する生物指標とされ、その構成は攪乱程度や自然の残存性を反映するからである。北海道湿地植物データベースを用いた北海道の湿性植物群落の分類結果を元に、各植物群落の指標種に点数をつけ、FQI(Floristic Quality Index)(Swink and Wilhelm, 1979, 1994)と呼ばれる評価インディケーターで計算を行った。検証対象の湿地として、北海道の低地に発達した高層湿原であった静狩湿原、歌才湿原、美唄湿原、月ヶ湖湿原を選んだ。これらは農地開発や排水路の掘削等で、植生に人為的な影響があらわれている湿原である。

計算の結果、人為的な影響が大きいところは低い値、人為的な影響が小さく健全なところは高い値を示した。中間の値を示すところは、さらなる指標種への点数のつけ方の検討が必要であると考えられ、実際の環境を反映した適切なインディケーターの開発が今後の課題である。


日本生態学会