| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-016 (Poster presentation)
植物ウイルスの研究はこれまで農作物や園芸種の病害を中心に行われてきたため、自然の生育地における知見はごく限られている。しかし、ウイルスは宿主の個体群に大きな影響を与えうるため、自然環境下での"ウイルス生態学"の発展が重要である。そこで本研究では、RNA-Seqを用いて野生植物のウイルスを検出し、これまで見ることの出来なかった野外での植物ウイルスの多様性や、その維持機構を明らかにしたいと考えている。
兵庫県の調査地に生育するアブラナ科植物ハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri subsp. gemmifera)について、約4000種の既知ウイルスをリファレンスにウイルス感染の有無を判別した結果、Turnip mosaic virusを含む3種類のウイルスを検出した。いずれもアブラナ科を宿主としうるウイルスであり、約半数の植物個体が何らかのウイルスに感染していたが、農作物で見られるような病徴を持たない個体も多く見られた。また、これらのウイルス間で重複感染が起こりやすい傾向が得られた。宿主植物の遺伝子発現の解析からは、ウイルス感染に伴う発現の変化が検出されてきている。
RNA-Seqによるウイルスの探索手法は、既知ウイルスの感染有無の判別だけでなく、未知のウイルスを見つける可能性も持つ。今後は、媒介昆虫の調査や集団間のウイルスの比較を進めるとともに、新規ウイルスの探索へも取り組んでいく。