| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-025 (Poster presentation)
スズメは、一回の繁殖の最後に止め卵と呼ばれる、通常卵(止め卵よりも前に産まれた卵)よりも卵殻色が薄く見える卵を産むことが知られている。この止め卵と通常卵の視覚的な相違を卵殻の色素量と関連づけて調べた研究は、現在までのところ見当たらない。そこで、本研究では卵殻色素であるプロトポルフィリン(以下、PP)とビリベルジン(以下、Bv)を定量することで、止め卵と通常卵の卵殻色素量と産卵順との関係について検討した。
スズメ卵は、秋田県大潟村で採取した未孵化卵を供試した。供試卵は2012年と2014年に採取した合計81個であった。大潟村の村内にある防風林などに巣箱を設置し、4月~9月に繁殖のためにスズメが巣箱を利用するのを待った。スズメが産卵を始めた巣箱は毎日なかを確認し、新たに産んだ卵の表面に油性ペンで番号を記した。そして、止め卵の産卵日をもとに産卵順を決定した。得られたスズメ卵殻からのPPとBvの抽出および定量は、当研究室の方法により行った。
スズメ卵の卵殻1gあたりのPP量ならびにBv量は、産卵順の間で有意な変化は見られなかった。止め卵と通常卵を比較したとき、止め卵の卵殻PP量とBv量は、いずれも通常卵より有意に低かった。スズメの止め卵の卵殻色が通常卵よりも薄く見えるのは、卵殻PP量が著しく減少することに起因していることが判明した。また、スズメの止め卵の卵殻Bv量が顕著に減少する理由は、抱卵開始までの日数が短くなるため、Bvによる抗酸化作用の必要度が低くなるためであろうと考えられた。