| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-026 (Poster presentation)
消費者の採餌移動は食物網を通して隣接する生息地の群集動態をつなぐ。そのため、ある生息地の餌資源の動態を理解するためには、その生息地内での消費者の採餌だけでなく、隣接する生息地での消費者の採餌を考慮する必要がある。例えば、餌資源の入るタイミングがパッチ状の生息地間で同調的な場合と非同調的な場合では、地域全体として利用可能な資源の総量が等しくても、消費者の移動パターンの変化を通して餌資源の時間動態や空間分布は変化するだろう。しかし、野外で消費者の移動パターンと餌資源量の変化を詳細に観察することは難しい。そこで本研究ではイモリ(消費者)―池のモリアオガエル幼生(餌資源)という系を模して、メソコスム実験を行った。イモリは池を模して設置した2つの桶の間を自由に行き来することができる。モリアオガエル幼生を各桶に導入するタイミングが同調的な場合と非同調的場合で、イモリの移動パターン、モリアオガエル幼生の個体数変動、藻類・植物プランクトンのバイオマス量にどのような違いが出るか調べた。その結果、幼生の加入するタイミングが桶ごとに異なると、イモリは幼生の個体数に応じて長く滞在する桶を切り替えるこた。幼生が同時に加入すると、イモリは桶間を行き来して採餌を行ったが、各桶での滞在時間には個体差があった。この個体差のため、モリアオガエル幼生の減少する早さもメソコスムごとに差が見られた。藻類と植物プランクトンのバイオマス量に対してイモリの移動の影響は明確でなかった。以上の結果は、餌資源の状態に合わせてイモリが柔軟に採餌移動をすることは、消費者個体の移動戦略と複数のパッチをまたいで成立する食物網を包括的に理解する枠組みが必要なことを示している。特に資源が同調的に入る時、餌資源の減少速度のばらつきが大きくなるという結果は、消費者の採餌移動について個体レベルの変異を評価する重要性を示唆している。