| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-027 (Poster presentation)

長期的な間接効果の働き方

*和田 葉子 (奈良女子大学院), 岩崎 敬二 (奈良大学), 遊佐陽一 (奈良女子大学)

生態系の複雑さをひも解く上で、間接効果の大きさや働き方を解明することは非常に重要である。捕食者は、しばしば被食者の密度変化を介して資源に影響を与える (密度媒介型の間接効果) が、被食者の行動や性質などの形質を変えることによっても資源に影響を与えることが知られており (形質媒介型)、これらの重要性は多くの先行研究で示されてきた。しかし、そのほとんどが室内や閉鎖的な屋外で行われており、実験期間も数日から数週間と短く、間接効果の大きさが正しく評価されているのかという点に疑問が残る。実験期間や季節の変化により間接効果の大きさは変動すると言われているが、実際に野外でこれを証明した研究はない。そこで本研究では、長期間での間接効果の変動やその季節性について調べることを目的とし、岩礁潮間帯において操作実験を行った。具体的には、捕食性巻貝イボニシ (Thais clavigera)・藻食者キクノハナガイ (Siphonaria sirius)・藻類アオサ (Ulva sp.)、藍藻 (Lithoderma sp.) という系を用い、イボニシがキクノハナガイを介して藻類相に与える間接効果の大きさを実験的に評価した。その結果、捕食者や藻食者の活動が活発な夏には、密度媒介型・形質媒介型いずれの間接効果によっても藻類相が藍藻から緑藻に変化すること、密度媒介型よりも形質媒介型間接効果の方が1カ月近く長続きすることが分かった。また、いずれの間接効果も秋には弱まり、春になると実験処理に関わらず同じような海藻の群集構造となった。つまり、捕食者の影響による藻類相の変化は長続きせず、一年のうちに元の構成に戻ること(間接効果のリセット)、およびその機構には生態系構成種の季節性が関与していることが示された。よって自然界における間接効果の大きさを正しく評価するためには、実験期間を十分に確保する必要がある。


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