| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-028 (Poster presentation)

人工池の水生昆虫群集 -遷移パターンとそれにかかわる要因-

*鈴木真裕, 平井規央, 石井 実(大阪府大院・生命・昆虫)

止水性の水生昆虫では水田などの一時的な水域に生息する種が多く,遷移に関する経験的な知見が得られている.そこで著者らは大阪府立環境農林水産総合研究所(寝屋川市)敷地内に12個の人工池(プラスチック容器製,220 ℓ,深さ20 cm)を設置し,2013‐2014年に目合い0.5 mmのハンドネットを用いた水生昆虫群集の継続調査を行った.人工池は季節性と時間経過を考慮するために5,7月に6個ずつ設置した(各M,J池).

解析は調査期間を3期(1年目8‐11月,2年目4‐7月,8‐11月)に分けて行った.各期のバイオマス優占種群(相対優占度>50%)は,J池では第1期がウスバキトンボ(55%,以下ウスバキ),第2期がタイリクアカネ(59%,以下タイリク),第3期がシオカラトンボとショウジョウトンボ(33と28%,以下シオカラ,ショウジョウ)であったのに対して,M池では第1,2期がそれぞれシオカラとショウジョウ(各期23と33%,41と28%),第3期がシオカラ(60%)であった.さらに,M,J池間の群集構造の違いをPERMANOVAにより解析(各種バイオマスを自然対数変換)すると,第1,2期ではそれぞれ有意に異なったが,第3期には有意差はみられなかった.一方,第3期に両池で優占したシオカラのバイオマス(11月時点)について,底生雑食者バイオマス,堆積有機物の強熱減量(AFDM),M,J池の区分,設置場所を説明変数とする一般化線形モデルで解析すると,AFDMのみが有意な正の効果を示した.

以上の結果から,夏開始の遷移では初期から順にウスバキ,タイリク,そしてシオカラとショウジョウが優占する群集へと変化する一方,春開始の遷移ではシオカラやショウジョウが優占し続けた.後者ではウスバキの産卵時季より早い遷移開始がシオカラやショウジョウの定着を促進したと考えられた.


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