| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-031 (Poster presentation)

ナラ枯れ発生に伴う林分構造の変化が鳥類群集に与える影響

石原通裕(新潟大・農)

日本海側多雪地において,ブナ科樹木の萎凋病害であるナラ枯れが猛威を奮った。ナラ枯れ発生林では,立ち枯れギャップが形成され,光環境が好転し,階層構造が発達するとともに,ナラ類の枯死木が増加する。このような林分構造の変化は,鳥類の営巣,採餌環境に影響を与えると考えられる。特に樹木に自ら巣穴を掘り営巣するキツツキ類やその古巣を再利用し,営巣する二次樹洞利用鳥類に好適な環境となることが考えられる。枯死木が供給されると,生物多様性が向上するという報告があることからも,ナラ枯れによって枯死木がまとまって生じた場合の鳥類群集の違いを検証することは重要である。本研究では,新潟県下越地方において,ナラ枯れ発生林分における繁殖期と非繁殖期の鳥類群集構造の把握と共に,ナラ枯れ木の営巣利用について評価した。調査はナラ枯れ発生帯の標高200~300mの落葉広葉樹林9サイトで実施した。このうち4ヵ所は枯死木と下層植生の大部分が取り除かれた管理林分である。鳥類群集調査は5月下旬~11月下旬に行い,9月~11月に階層構造と,ナラ類の生立木と枯死木におけるキツツキ類の営巣痕,採餌痕の調査を行った。鳥類を営巣ギルドと採餌ギルドに区分し,解析を行った結果,繁殖期ではヤブ・低木営巣ギルドの種数と個体数に,非繁殖期では樹上採餌ギルドの個体数に有意差が認められた。ナラ枯れ木への営巣痕は4つ確認され,巣穴の直径から3つはコゲラのものと考えられた。採餌痕は枯死木で有意に多く認められた。鳥類群集で違いがあったのは,人為的管理が行われたヤブ・低木ギルドのみであったことから,ナラ枯れによる群集構造への影響は限定的であると考えられた。また,採餌環境としてのナラ枯れ木は重要であり,掘る力の弱いコゲラのような体の小さいキツツキ類には,営巣資源として機能することが示唆された。


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