| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-032 (Poster presentation)

岩礁潮間帯における固着生物の群集プロセスと群集構造:潮位による季節性の違い

*金森由妃(北大・院・環境科学),深谷肇一(統数研),岩崎藍子(北大・院・環境科学),野田隆史(北大・地球環境)

環境の季節変化は地球上のあらゆる生息地に存在し,群集の季節動態を生じさせる.その一方で環境勾配もまた多くの生息地で普遍的に存在し,群集構造やその維持形成機構に空間変異を生じさせる.しかし群集の季節動態が環境勾配に沿ってどのように変化するのかは未だほとんど明らかでない.そこで本研究では物理的環境の季節変動と垂直方向に顕著な環境勾配が存在する岩礁潮間帯の固着生物群集を対象に,固着生物の空間占有状態とその推移から群集構造の時間変化とその背後ではたらく群集プロセス(加入,死亡,置換,存続)を定量的に評価できる推移確率行列モデルを適用し, (ⅰ)群集プロセスと群集構造の季節変化の大きさ,(ⅱ)空間占有率と占有状態の時間推移の季節変化,の潮位による変化を明らかにした.

2002-2011年の春と秋に北海道東部で永久方形区内の固定調査点を観察し出現種を記録した.固定調査点の空間占有状態は8つの種群に分類し,その季節推移データから夏と冬の推移確率行列ならびに秋と春の群集構造を推定した.群集構造と群集プロセスの季節変化の大きさはユークリッド距離を用いて算出した.

(ⅰ)群集プロセスと群集構造の季節変化の大きさは,どちらも高潮位で小さく中・低潮位で大きくなった.(ⅱ)空間占有率の季節変化が見られた種群の数は低潮位ほど多くなった.また季節変化が見られた占有状態の時間推移の数は高潮位ほど多く,そのほとんどが置換競争であった.

以上の結果は,岩礁潮間帯の固着生物群集では,群集の季節動態は物理的環境の季節変動幅が大きくなる高潮位に向かうほど顕著になるという単純な空間変異を示すのではなく,高潮位に向かうほど種間相互作用の季節変化が多様化する一方で群集組成の季節変動量は小さくなることを示唆する.


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