| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-033 (Poster presentation)
大型草食獣は北半球を中心として過増加傾向にあり、それに伴う森林生態系の改変が懸念されている。大型草食獣の過増加に対する生態系の反応を予測する上で、どのような生態的特性を持った生物種が敏感に反応するのかを明らかにすることは根幹の課題である。そこで、本研究では大型草食獣の高密度化が5つの昆虫類分類群(カミキリムシ類、蛾類、糞虫類、オサムシ類、シデムシ類)に及ぼす影響を分類群および機能群間で比較することを目的とし、それぞれの分類群・機能群の特徴について検討した。
本研究では、北海道大学苫小牧研究林内のシカ密度調整区とその周辺区域において、各分類群をそれぞれに対応したトラップを用いて採取した。解析は一般化線形モデルもしくは一般化線形混合モデルを用いて実施し、各分類群および機能群の個体数・種数・多様度指数H’についてサイト間の差を検討した。
その結果、シカの高密度化に対する昆虫類の反応は、分類群・機能群間で反応の方向性が大きく異なり、生息環境や食物資源として下層植生に依存する分類群・機能群では過採食の影響を受けて負の反応を示した。その一方で、シカの過増加が食物資源を増加させると考えられる分類群では正の反応が認められた。
このことは、大型草食獣の過増加は生物群集の均質化(Biotic homogenization)を引き起こす可能性を示唆している。また、大型草食獣の過増加に起因する栄養カスケードは、過採食による植生の減少のみならず、糞量や枯死木の増加など多様で複雑な経路をとることで、昆虫類に影響することが示唆された。