| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-036 (Poster presentation)
1940年代から90年代にかけて干拓や埋め立てなどで日本の約40%の干潟が消失し、陸域からの環境負荷の軽減など、干潟の持つ機能の劣化が懸念されている。鹿児島県南部の離島も例外ではなく、世界自然遺産の候補地となった奄美大島でも、近年、自然海岸の減少が著しい。一方で、この地域を含め亜熱帯域における干潟の底生生物群集を調べた研究は少ない。そこで本研究では、奄美大島において特徴的な底質である4か所の干潟で底生生物相を比較した。
調査は、奄美大島北部の笠利湾にある手花部干潟と屋入干潟、中部の住用湾にある住用干潟と市干潟において、いずれも夏季の大潮時に行った。それぞれの干潟でライントランセクトによる底生生物の定量調査を行い、各干潟24個のステーションを設置した。生物の採集には直径17cmのコアを使用し、深さ10cmまでの泥を1mmメッシュの篩でふるい、残った底生生物を全て採集した。また、底生生物の採集と共に底質サンプルも採集した。
調査の結果、出現種と個体数は手花部干潟において計47種・230個体、屋入干潟で計44種・214個体、住用干潟で25種・313個体、市干潟で計30種・233個体であり、種数においては手花部干潟、個体数においては住用干潟が最も多かった。また、手花部干潟や住用干潟では、コメツキガニやミナミコメツキなどの甲殻類、屋入干潟でウミニナ類などの腹足類が、市干潟ではコケゴカイなどの多毛類がそれぞれ優占分類群となっており、異なった底生生物相となっていた。発表では、群集組成を比較するとともに、底質環境との関わりを考察する予定である。