| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-037 (Poster presentation)
近年、種内の遺伝的変異と生物群集の構造の関わりに注目が集まっている。とりわけ、植物種内の遺伝的変異が植食者群集や関連するより上位栄養段階の生物群集の特性(個体数、種数、種組成)やその動態に強い影響を与えることが明らかになりつつある。しかし、多くの先行研究では、土壌や気象条件などが均一に設定された圃場や温室内で行われている実験デザインが多く、実際の野外生態系でのインパクトを明らかにした研究は少ない。そのため、遺伝的変異の効果を過大評価している可能性もある。そこで本研究は、森林生態系において、樹種内の遺伝的変異がその表現形質と昆虫群集に与える相対的重要性を明らかにすることを目的とした。北大雨龍研究林の4つの河川系に成立しているケヤマハンノキの野外集団を対象に、110個体をランダムに選択し、葉形質の測定と昆虫群集の調査を行った。また、このハンノキ集団は2409個のSNPの解析から遺伝的な集団構造をもつことがわかっている。葉形質データとNeiの遺伝的距離、あるいは地理的距離との相関についてマンテル検定を用いて解析を行った結果、遺伝的に離れたハンノキ集団ほど、含水率・LMA・SLAが異なっていた。一方で、この形質の変異と地理的な距離との間に相関は見られず、遺伝的な変異が野外での表現形質に強く影響することが明らかになった。これらの形質は昆虫群集の決定に寄与することがよく知られており、昆虫群集への波及効果を示唆する。発表時には、さらに昆虫群集についての解析結果も合わせて議論する。