| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-041 (Poster presentation)

平野部の農業用水路におけるイシガイ科二枚貝類に物理環境と水田が与える影響

*中野光議,山本達也,高倉耕一,浦部美佐子

国内に生息する流水性のイシガイ科二枚貝類(以下、イシガイ類)は近年急速に減少しており、絶滅が危惧されている。イシガイ類の主な生息場所は農業用水路であり、水路において生息環境の保全を推進することが課題となっている。しかし、イシガイ類の生息と水路の環境との関係を調べた知見は乏しい。とくに、生息に好適な水路の物理環境を明らかにすることが必要とされている。また、水田は植物プランクトンを供給することで貝類の成長・生存に好影響を与えると言われているが、水路に生息するイシガイ類に水田が与える影響については明らかにされていない。

そこで本研究では、水路の物理環境および水田との隣接がイシガイ類に与える影響を明らかにするため、滋賀県湖東地域の農業用水路の25区画においてイシガイ類の採捕と環境要因の測定を行い、一般化線形モデル(GLM)を用いた解析を行った。

調査の結果、全25区画中、砂礫が優占していたのは18区画、泥が優占していたのは7区画であった。底質の軟らかさの範囲は7~243mm、水深は11~64cm、流速は6~41cm/sであった。水田と隣接していたのは15区画、隣接していないのは10区画であった。イシガイ類としてタテボシガイ、マツカサガイ、ササノハガイ、タガイが採捕された。GLMを用いた解析により、底質タイプ、底質の軟らかさ、水深、流速はそれぞれ、イシガイ類の密度に有意な効果が認められた。しかし、効果の正負や相対的な重要性は種間で異なると推定された。また、いずれの種も水田と隣接する区画で密度が低かったことから、水田排水がイシガイ類に悪影響を与えている可能性が示唆された。


日本生態学会