| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-048 (Poster presentation)
過去30年以上にわたる気候変動は、生物の分布や多樣性に多くの影響を及ぼしてきた。IPCC(2007)は、将来の平均気温が1.5〜2.5度上昇した場合、生物種の20〜30%が絶滅すると予測している。したがって、気候変動に伴う生物多様性の変動パターンを継続的に監視し、多様性の損失の傾向を把握することを通じて、被害を最小限に抑える方策を考えるためのデータを蓄積する必要がある。
森林内の地表に生息するオサムシ科甲虫は、飛行能力が失われた種が多く、分散能力が弱い。よって特定の地域の森林環境に影響を受けやすいため、指標生物として注目されている。さらに、温度に対する感受性が高いため、地球温暖化の影響を早期に検出可能な昆虫群としても知られている。
本研究では、韓国の五台山において2011年から2014年まで、環境が異なる3地点で、年に3回ずつオサムシ群集組成を調査した。同時に気候調査を行い、気候変動がオサムシ群集に及ぼす影響を解析した。
正準対応分析の結果、環境の違いが群集組成におよぼす影響が、夏と冬で異なる傾向が現れた。2011年は、夏の温度が群集組成に影響したが、2012~14年は冬の温度が群集組成に影響した。GLM分析の結果、夏と冬の気温が高いほど、種の多様性が高まることがわかった。しかし、冬の土壌温度が低いほど種の多様性が高くなることもわかった。
IPCCによると、地球温暖化が進むと、北半球では夏に気温が上がり、冬の気温は低くなる。よって、本研究の結果からは、地表性オサムシ群集の多様性がどのように変化するのかを予測することは難しい。多様性の変化を予測するためには、環境要因が個々の種の個体数にどのように影響をおよぼしているかを確認する必要がある。