| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-051 (Poster presentation)
カワリヌマエビ属Neocaridina spp.は中国や韓国から釣り餌として輸入され,それらが生きたまま放流された結果,外来種として日本に定着し拡散した可能性が高い。滋賀県では,2001年にはじめて採捕され,その後分布を拡大している。また,カワリヌマエビ属は在来種のスジエビPalaemon paucidensやヌカエビParatya improvisaと同所的に採捕され,どの種も雑食性であるため,種間で生息場所や餌資源を競合している可能性がある。しかし,この競合関係については報告例が見当たらない。そこで,滋賀県彦根市を流れる江面川水系の農業排水路のうち3水路を選択し,上流部から接続河川付近までのエビ類の分布を調査した。
調査は水田からの排水が水路に流入する2014年6月16,20,23,30日に実施した。各調査地点では,水路に沿って30 mの区間を設定し,調査区間とした。そして,各調査地点で2名が水路に入り,タモ網(36×35 ㎝:目合い3 ㎜)を使って15分間エビ類を採捕し,あわせて水路環境として水温,流速,水深,水路幅を記録した。
その結果,スジエビが292個体,ヌカエビが7個体,カワリヌマエビ属が497個体採捕された。スジエビは各水路の下流部に多く分布し,カワリヌマエビ属は各水路の上流部に多く分布した。統計解析の結果,接続河川から調査地点までの距離(水路の下流端からの距離)はスジエビの個体数には負の相関を示し,カワリヌマエビ属の個体数には正の相関を示した。また,流速はスジエビの個体数には正の相関を示し,カワリヌマエビ属の個体数には負の相関を示した。さらに,スジエビとカワリヌマエビ属の個体数には負の相関があった。よって,スジエビとカワリヌマエビ属の分布の違いは,接続河川から調査地点までの距離と流速,他種のエビ類の存在が関係することが示唆された。