| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-130 (Poster presentation)

千葉県北部における過去130年間の土地利用の変遷と草原植生への影響

*野田顕(東邦大・理)・山ノ内崇志(東邦大・理)・近藤昭彦(千葉大・環境リモセン)・西廣淳(東邦大・理)

草原は主に人為により維持されてきた生物多様性保全上重要な場である。しかし都市開発や管理放棄により草原は全国的に減少し、種の絶滅を危惧されている。本研究では、江戸時代に広大な草原が存在していた千葉県北部を対象に、草原の保全と再生に資する基礎研究として、明治初期から現在までの草原の分布・面積の変化を把握した。また種多様性の高い草原が成立する条件を、現在と過去の土地利用から解明することを目的とした。

土地被覆の変化を明らかにするため、国土地理院1/25000地形図における「白井」「小林」の範囲を対象に、明治期から現在までの土地被覆のデータを使用して、土地被覆ごとに年代間の変化面積を求めた。また2014年に対象範囲内の草原で行った植生調査のデータを用い、現在の管理と過去の土地被覆の履歴のそれぞれが、在来草本植物種数ならびに在来草原生植物種数に影響する要因を解析した。

明治期において草原面積は全体の4.2%であった。1950年代では草原の一部は農地に代わり3.0%になった。1980年代では造成場所として草原的環境が新たに作られたことで11.5%に増加した。2000年代にはその場所の開発が進むことで5.9%に減少した。残存する草原の在来草本植物および在来草原生植物の種数に影響する要因を解析したところ、現在の土地管理だけではなく、過去の土地被覆も有意に影響しており、1980年代以降に農地として利用されていなかった場所、現在草刈りなどの管理を行っている場所で種数が多いことが示された。今後、草原の再生では、1980年代以降の土地被覆を考慮し、ポテンシャルの高い場所を対象とすると効果が大きいと考えられる。


日本生態学会