| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-134 (Poster presentation)
井の頭池はかつて湧水で涵養されており、生物の豊かな池であった。しかし、外来種の移入、都市化に伴う水質の悪化、湧水の減少が生じ、在来の水生植物はほぼ消滅した。現在、井の頭公園では、開園100周年に向け、生物多様性の回復・生態系の再生の気運が高まっている。その修復には基盤となる植生の回復が必要である。本研究では、井の頭池の水生植物の再生可能性の検討に資するため、底泥中の水生植物の散布体バンクの種組成を明らかにすることを目的とした。
実生発生法を用いた散布体バンクの調査を行った。事前調査において池底の表層には水生植物の種子が確認できなかったため、本研究では、表面から50-80 cmの層(上層)と80-110 cmの層(下層)の土壌を採取した。採取した土壌を水深15 cmの冠水条件にまきだし、そこから出現した実生を計数・記録し、実生密度の最大値を算出した。また、過去の水生植物相を文献と標本情報から整理し、散布体バンクから出現した種との比較を行った。
今回の散布体バンク調査では11種の実生が確認された。そこには、環境省RLで絶滅危惧Ⅰ類のハダシシャジクモ、II類のシャジクモ、東京都北多摩RLでIA類のミゾハコベ、II類のコウガイモが含まれていた。下層の土壌からは11種すべてが確認され、そのうち5種は上層の土壌からも確認された。井の頭池において過去に記録された水生植物は70分類群あり、そのうち散布体バンクからも出現したのは4種だった。過去に導入記録がある外来種・園芸種のシードバンクは確認されなかった。シードバンクが確認された種のうち6種は、過去に記録がない在来水生植物であり、過去の分布記録と散布体バンク出現種が必ずしも一致しないことが分かった。