| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-136 (Poster presentation)
関東地方の都市近郊では、二次林(いわゆる里山)の管理放棄によってアズマネザサが優占し、林床植物の多様性が著しく低下している。しかし、刈取りに代表される里山管理の再開が、林床の環境条件及び林床植物の種数・被覆面積・生活史にどのような影響を及ぼすのかは不明である。これらの点を明らかにするため、我々は2010年に早野梅ヶ谷特別緑地保全地区(川崎市)に常緑樹やアズマネザサの刈取りを毎年夏に行う区域(刈取り区)と、管理を行わない区域(対照区)を設置した。3年後の2013年には、調査区内の立地(谷、南向き斜面、北向き斜面、尾根、林冠ギャップ)に着目して計9箇所のプロットを設置し、光合成有効放射吸収率(fAPAR)、土壌含水率、地表面温度、アズマネザサの生育密度、プロットの方位・傾斜・高低差、林床植物(草本層の木本を含む)の種数及び被覆面積を調査した。2014年には優占種であったジャノヒゲ、ヤブランについて、生育個体数、開花率、結実率などを調査した。確認された全57種の植物のうち、刈取り区のみに出現したものは30種(53%)、対照区のみに出現したものは5種(9%)であり、全体の90%以上(52種)が刈取り区に生育していた。しかし、木本と草本では種数の規定要因が異なり、木本にはfAPAR、草本には土壌含水率と地表面温度が関係していた。さらに、林床の被覆面積は優占種(ジャノヒゲ、ヤブラン)の分布特性を反映し、プロットの高低差や土壌含水率が関係していた。ジャノヒゲとヤブランの出現に刈取り管理は関与していなかったが、開花率や結実率には著しい上昇が認められた。刈取り管理は林床植物の種数増加をもたらすが、その影響は木本と草本、出現率と被覆面積(優占度)、開花率や結実率といった各要素によって異なることが明らかとなった。