| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-137 (Poster presentation)

伊那盆地におけるナゴヤダルマガエルの分布状況と環境要因

*日隈徳子(信大院・農),大窪久美子(信大・学術院・農)

ナゴヤダルマガエル(Pelophylax porosus brevipodus)は全国的な生息地や個体群の減少から、環境省版RDBで絶滅危惧ⅠB類に指定されている。特に長野県伊那盆地は本種の北限かつ隔離分布地であるため絶滅の危急性が高く、県RDBでは絶滅危惧類ⅠA類に指定されている。そのため、本研究では伊那盆地における本種の現在と約15年前の生息状況や環境要因を比較、かつ両者の関係性を考察することによって、保全策の検討を図ることを目的とした。田内で生活環を全うする種として知られている。調査対象地は本種の生息が過去に確認されている上伊那郡辰野町から高森町までとした。調査は過去に行われた14地区と、新規に1地区を加え、計15地区の水田139筆で、2014年8月中旬から9月上旬まで実施した。対象種はナゴヤダルマガエルと、本種と交雑形成を行うトノサマガエルの2種とし、対象種が最も活発になる21時頃から深夜2時頃まで水田の畔を可能な限り歩き、単位距離当たりの個体数密度を算出した。環境調査は踏査により水田の畔シートの有無、水路の構造、土塗りの有無等を記録した。

その結果、過去に本種が分布した14地区のうち、11地区で現在の生息を確認した。過去に個体数密度が高く、分布の中心と考えられた辰野町から伊那市までの地区は、現在も同様の傾向が認められた。また、駒ヶ根市中沢では、個体数密度の調査時には生息が確認できなかったが、後の追加調査で分布を確かめることができた。本地区は過去の結果でも個体数密度が低かったが、これは分布の中心から外れているためと考えられた。分布の有無は、来年度にさらなる調査で確認する予定である。なお発表会では、生息状況と環境要因との関係性についても報告する予定である。


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