| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-138 (Poster presentation)
人為的攪乱景観における生物群集の保全は、成体の密度だけでなく、繁殖成績を考慮して行われることが強く望まれている。他方、投資と社会の関心を高める点から、指標種による生物多様性保全は実践的な保全の根幹を担ってきた。そのため、指標種を利用して多種の繁殖成績を高い場所を保全する手法の開発が強く望まれる。我々は、北海道中央部の分断化された湿地パッチにおいて、指標種の猛禽類(チュウヒ)にとってのパッチの質と、その他の湿地性鳥類の繁殖成績の関係を調査した。まず、調査地全域のパッチのチュウヒの定着年数と積算巣立ち雛数を3年間に渡って調べ、チュウヒにとってのパッチの質を評価した。次に、チュウヒにとってのパッチの質が様々な26のパッチで、湿地性鳥類の成鳥/巣立ち雛密度を、プレイバック法による複数回カウントを用いて調べた。そして、成鳥/巣立ち雛個体数の発見率の季節変化を考慮し、チュウヒにとってのパッチの質と湿地性鳥類の成鳥/巣立ち雛密度の関係を調べた。その結果、40%の種の成鳥個体数(10種中)、約70%の種の巣立ち雛個体数(7種中)が、チュウヒにとってのパッチの質と正に関係することが明らかになった。これらの結果は、プレイバック法と発見率を考慮した統計モデルを用いれば、短期間に広域に渡って多種の巣立ち雛密度を推定できること、猛禽類の生息地の質の広域評価が、多くの鳥類群集の効果的な保全に役立つ可能性を示唆する。