| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-140 (Poster presentation)
ミツバチは、野生植物の送粉(基盤サービス)、作物の授粉(調節サービス)、蜂蜜生産(供給サービス)などの複数の生態系サービスの提供に寄与することから、生態系サービス評価における指標生物になることが期待される。本研究は、奄美大島において、在来種ニホンミツバチの生態系サービス提供にかかわる花との相互作用を、コロニーの花資源利用の面から明らかにすることを目的とした。調査は2つの異なる景観に営巣するコロニー(亜熱帯照葉樹林の樹洞に営巣するコロニーと、里地の墓に営巣するコロニー)、を対象とし、1)コロニーへの持ち帰り花粉荷と、2)営巣場所から半径2 km圏内(潜在的な採餌圏)の花資源調査を実施した。
各コロニーの持ち帰り花粉荷の分析を通して、利用が確認された植物種を生活生態型(常緑高木・常緑低木・落葉高木・落葉低木・つるつた・草本)に分けて集計した結果、春は秋に比べて常緑高木・低木の利用率が高かった。また、里地のコロニーよりも森林の樹洞のコロニーの方が常緑高木・低木の利用率が高かった。
特に森林内の樹洞に営巣するニホンミツバチは奄美大島の亜熱帯照葉樹林の多様な植物を、季節を通じて利用することでコロニーを維持していることが明らかになった。同時に、ニホンミツバチがこれらの植物の送粉に寄与している可能性も示され、ニホンミツバチは、奄美大島の亜熱帯照葉樹林を維持するための基盤サービスに寄与していると考えられた。