| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-143 (Poster presentation)
市民科学は市民がデータ収集や解析などの研究プロセスに関わり、地球温暖化や外来種などが生物多様性に与える影響を明らかにするための手法として有効である。しかし、市民科学には「参加者の継続性」が課題として挙げられている。この課題の解決には、参加者の市民科学プロジェクトへの関心や参加意欲とこれらの関係性を明らかにする必要があるが、これらに関する研究事例はほとんどない。そこで全国規模の市民科学プロジェクトの参加者を対象に、参加者の意識や参加意欲とともに両者の関連性を明らかにすることを目的としたアンケート調査を実施した。
本研究では、NPO法人生態教育センターが実施している「お庭の生きもの調査」の参加者900名を対象とした。アンケート調査では、1)調査の楽しさ、2)自然への愛着、3)調査を通しての学び、4)環境保全活動の意義、5)調査を通じた自己成長、6)次世代への責任感、7)自然への意識、8)プロジェクトの満足感の項目と今後の活動への参加意欲の項目を調べた。また、1)~8)の項目と参加意欲との関連性については重回帰分析を用いて解析した。
アンケート調査の結果、参加者の半数以上が60代以上であり、7割の参加者が2年以上プロジェクトに参加していた(n = 132)。また、自然への愛着(動物が好きだから)、自己成長(新しいことに挑戦したいから)、プロジェクトの満足感(調査を他人に紹介したい、調査が面白い、総合的に満足できる内容である)の各項目が参加意欲に有意に影響を与えていた。参加者のプロジェクトへの参加意欲を向上させるためには、調査対象種に興味を持たせることや、参加者が収集したデータや調査結果の開示を行うなど、参加意欲に関係のあった自然への愛着、自己成長、満足感を増加させる工夫が必要であると考えられた。