| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-145 (Poster presentation)
南西諸島では,赤土の流出による水質や底質の汚染が問題視され,赤土が河口域で堆積した場合,魚類や甲殻類,藻類の群集に悪影響を及ぼすと考えられている.一方,魚類に対する赤土の影響について,定量的に調べた例はない.そこで本研究では,年間の赤土流出量が多い塩屋湾干潟とその比較対象である佐敷干潟において,底生性魚類であるハゼ亜目魚類を対象に,赤土が群集構造や干潟環境にどのような影響を及ぼすのか解明することを目的とした.本研究では,2013年4月から2014年6月に塩屋湾干潟と佐敷干潟において,1×1 mのコドラートを塩屋で108地点,佐敷で200地点に設置し,環境測定(水温,塩分,流速,水深,底質硬度,泥分,中央粒径値,礫被度,リター被度)と魚類採集を行った.各干潟に出現した種数と個体数から,Shannon-wiener,Simpsonの多様度指数を算出した結果,ほぼ全ての季節において,塩屋は,佐敷よりも低かった.また,両干潟の群集構造を明らかにするため,非階層クラスター分析を行った後,Indval値からクレードごとの指標種を選定した結果,佐敷では4つ,塩屋では2つのクレードで指標種が選ばれた.さらに,佐敷では異なるクレードの指標となった種が,塩屋では同じクレードの指標種として重複して選ばれていたことから,塩屋の底生性魚類群集の構造は,佐敷より単調であることが示された.両干潟での底質環境を比較すると,塩屋は,佐敷と比べて礫が少なく,底質硬度の範囲が狭かった.すなわち,塩屋は,赤土の堆積が底質の単調化を引き起こしたため,軟泥底が広範囲に分布していると考えられた.以上より,赤土の堆積が著しい塩屋では,赤土の影響を受けていない佐敷と比べ,種多様度,群集構造,底質環境が単調であることが示された.