| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-147 (Poster presentation)
絶滅危惧ⅠB類のチャマダラセセリの生息地を保全するため、本研究では管理放棄による遷移進行がみられた半自然草原群落において植生管理実験を行い、その効果を検証した。岩手県における本種の生息地は、食草のミツバツチグリが生育し、地面が露出したシバ群落である。植生管理実験は2012年9月に刈取りと地面掻き出しを行い(2012処理区)、一部に翌年9月に追加で木本と藤本類を選択的に刈り取る区(2012処理区´)を設けた。また、別途新規に2013年9月から刈取りと地面掻き出し区(2013処理区)を設置した。さらに、各処理区と同様な群落において同年6月に無処理の対照区を設けた。2014年6-7月と9月に、各区において植物社会学的植生調査と立地環境条件調査を、春季にはチャマダラセセリの産卵・幼虫数調査を行った。春季の地際の相対光量子束密度は2013処理区が対照区より高かったが、2012処理区は対照区と同等であった。また、春季の植被率は2013処理区が他区より低い傾向にあり、チャマダラセセリの産卵等は対照区以外で確認された。秋季における相対積算優占度を用いた生活型組成について、既報のシバ群落と比べると、各処理区の地上植物の優占度の割合が高く、これはナワシロイチゴなどの再生によるものであった。刈取り等を実施した約2年後でも、チャマダラセセリの産卵等は確認されたが、植被率や光条件が対照区と同等となっており、生息環境の悪化が考えられた。食草と競合するイネ科植物や木本類等を抑制するためには、毎年刈取り等を行う必要があるが、チャマダラセセリの生活史を考慮し、隔年で実施することが適当であると考えられた。