| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-151 (Poster presentation)
大型類人猿は絶滅危惧種であり、その生息地選好性の解明は、効果的な保全のために重要である。近年リモートセンシング(RS)技術の発展により、ボノボ(Pan Paniscus)の寝床の発見場所に基づく広域生息適地モデルが策定され、保全計画にも活用されている。しかし、現地情報の不足ゆえに、未だ生息地区分は荒く、寝床利用以外のボノボの生息地選択は同モデルに未反映である。本研究では、ボノボの長期調査地であるコンゴ民主共和国ワンバにおいて、現地踏査と簡易な画像分類による生息地の分類を試み、ボノボ一群の行動ごとの生息地選択を調べた。対象地の衛星画像(Quickbird)に、既存の森林区分図と浸水地推定図を重ねて大分類を作成し、さらに部分的にオブジェクトベース分類と現地踏査に基づく再分類を行った。結果、非浸水地は①成熟林②農地・二次林③居住地に、浸水地は④湿地林⑤ヤシ林⑥沼に、分類された。行動データは、2007年から2008年の群れ追跡の記録を用い、遊動・採食・寝床の場所と採食物を特定した。対象群は、年合計では、成熟林のみを遊動・採食・寝床の全てについて選択的に利用し、その選択性は寝床において最も高かった。特定の月のみ、湿地林を選択的に利用し、湿地林特有の特定の果実を高頻度に採食した。居住地と農地・二次林を避けたU字型の遊動を示す一方で、農地・二次林ではほぼ毎月採食を行い、その頻度は成熟林の果実欠乏期に高かった。ヤシ林と沼はほぼ利用されなかった。以上より、湿地林及び二次林は成熟林とは異なる餌資源の提供場所であること、RS技術によるボノボ生息地の再分類の可能性及び必要性が示唆された。行動観察者が有する行動データや現地の環境条件を、空間明示的に集約し、保全計画に反映することが重要と考える。