| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-153 (Poster presentation)

長野県南信地域における半寄生植物マツグミの分布と生育要因

佐藤匠(信大・農),大窪久美子(信大・学術院・農),渡辺太一(信大院・総合工研)

マツグミはオオバヤドリギ科マツグミ属の半寄生植物で、宿主はアカマツ等のマツ科の一部である。本種は長野県で準絶滅危惧種に指定されており、マツ枯れが減少要因とされている。県内においては標本による自生地の報告はあるが、分布情報はほとんど無い。本研究では主な分布地域と考えられる伊那盆地において、マツグミの分布と生育状況を明らかにし、本種の保全策を検討するための基礎的知見を収集することを目的とした。

分布調査は3次メッシュを基本単位として、標本データや聞き取り調査から得られた情報を元として、主にアカマツ林を対象に現地踏査による自生地の測位や宿主単木毎の個体数のカウントを実施した。また、3箇所の自生地において方形区(15m×15m)を設置し、毎木及び環境調査を行った。さらに、国内における自生地情報をS-Netサイトを用いて収集し、位置情報から気温等の推定値を求めた。

水平分布としては伊那盆地の南部ほど、マツグミの個体数や宿主となっているアカマツ等の個体数は多い傾向にあった。また、本種の垂直分布は標高450m~850mの範囲で、これは暖温帯の常緑広葉樹林帯上部から中間温帯、冷温帯の落葉広葉樹林帯下部にあたる。次に、マツグミの自生地の多くは孤立林で、樹林ではほとんどが林縁部に生育していた。一方、S-Netサイトの他地域の自生地情報(12都道府県、44件)から、本種の分布地は暖温帯の常緑広葉樹林帯で、標高5m~335mの範囲にあった。また、寄生されたアカマツの胸高直径は、他よりも有意に大きかった。また、マツグミの個体数及び在・不在に関して、環境要因との相関関係を検討した結果、共に樹木の個体数密度と有意な負の相関があることが明らかになった。


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