| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-154 (Poster presentation)
近年、水路等の二次的自然に生育する水生植物や湿性植物の減少や絶滅が問題となっている。地域の生物多様性を保全するためには、このような二次的自然の現状や立地環境との関係性を把握する必要がある。本研究では、藤原らの先行研究(2014)に続いて、伝統的な水路網が維持されてきた長野市松代町を事例に、水路や河川に成立する群落の特性及び立地環境や管理等の人為的要因との関係性を解明し、これらの保全策を検討することを目的とした。
調査プロットは水路の構造条件が同一である区間を単位とした。また、各水路の合流や分岐点などで分けた結果、調査プロットは152個となった。立地環境については水路の側面及び底面構造等を記録するとともに、水質調査を実施した。また、管理状況を把握するため各区長へ聞き取り調査を行った。
水路及び河川の出現種数は各々76種と95種であった。TWINSPAN解析の結果、全調査プロットは5つの群落型に分類された。さらに各群落の指標種をINSPAN解析によって抽出した。
両面が石のみの石垣で組まれた水路では、シダ植物等で構成される湿生群落が成立した。長野県で絶滅危惧種のヤナギモ、またアオウキクサ、エビモ等の水生植物を指標種とした群落型は保全上重要な群落型と考えられた。またヤナギモが出現する松代町西側の地区では神田川から水を供給しているが、非出現地区では主に東側の蛭川を源としており、水路と河川とのネットワークの維持が重要と考えられた。また、管理頻度の高い地区にヤナギモの個体数が多く、藤原ら(2014)も指摘したが、藻刈りや落ち葉の除去等の管理作業が本種の更新には必要であることが示唆された。