| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-156 (Poster presentation)
ニホンミツバチ(以下ミツバチ)は、奄美群島がその南限とされており、奄美大島で採集されたミツバチ個体が、本州や九州と異なるハプロタイプを持っていたとの報告がなされている(Takahashi et al. 2007)。固有の動物種を多く含む地史的特徴からみても、奄美大島のミツバチが、独自の保全単位を形成している可能性がある。本研究は、奄美大島のミツバチの保全上の重要性を評価するとともに、亜熱帯照葉樹林帯のミツバチの保全に必要な生態的知見を得ることを目的として、野生個体群と野生個体群を導入した飼育個体群を対象に、1)営巣環境に関する情報収集と現地での観察、2)東北地方や九州地方との体サイズ比較、3)繁殖期のコロニーの採餌活動と4)繁殖カーストの活動の把握、5) 巣周辺での天敵の観察を行った。
1)奄美大島全体で11か所の営巣が見いだされたが、約半数が樹高12m以上の高木の樹洞で認められた。2)体サイズを奄美大島、鹿児島、岩手県で比較した結果、奄美大島個体群の体サイズが有意に小さかった(p<0.0001)。3)自然林の樹洞および集落の墓内部の巣で採餌活動を観察したところ、活動は天候に大きく依存した。4)年平均気温が最も低い時期に繁殖カーストの生産が開始されており、繁殖に伴う分封が、2月中旬に観察された。5)スズメバチ類による捕食が確認されたが、コロニーに大きな影響を与える天敵は観察されなかった。奄美大島のミツバチは、体サイズが本土のものと異なるなど、異なる生態特性をもつことが示された。また、亜熱帯性気候により雨天や風の強い日が多い奄美大島では、天候の変動に適応した採餌活動を行っていると考えられた。自然度の高い森林内の樹洞では、大きなコロニーが確認され活発な活動が認められた。営巣場所や採餌場所として、樹洞を有する大径木が集中する森林域の保全が必要だと考えられた。