| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB1-157 (Poster presentation)
絶滅危惧種タチスミレは絶滅危惧Ⅱ類に指定されている多年生草本である.現在国内の生育地は限られており,主に河川敷の林縁や湿地などのヨシ群落やオギ群落の草地を生育地とする.本研究の調査地である茨城県常総市の菅生沼では,ヨシ群落やオギ群落などの湿性草本群落が広がり,タチスミレの保全のために火入れや刈り取りなどの管理が行われている.本研究では,調査区内に設けられた管理の中断区をもちいて,管理の再開が本種にあたえる効果を検討することを目的とした.
調査区は火入れ区と中断区の2つの区画からなる.前者は2003年から2011年まで火入れが行われた.その後2年間火入れを中断し刈り取りを施し,2014年に火入れを再開した.後者は2003年から2006年まで火入れを行い,2007年から2012年まで管理を中断した.その後,2013年に刈り取りを行い,2014年に火入れを再開した.両区画とも,2007年から1 m×8 mのコドラートが作られており,2012年を除き個体密度が記録されている.
火入れ区では,火入れを中断し刈り取り管理を行った2013年と火入れ再開後の2014年の個体密度を調べると,有意な個体密度の増加がみられた.中断区では,管理の中断を続けた2011年と刈り取り管理を行った2013年を比べると,刈り取り管理後で有意な個体密度の増加がみられた.一方,刈り取り管理を行った2013年と火入れ管理を再開した2014年を比べると,有意な差は見られなかった.以上のことから.火入れ管理の再開が,本種とその個体数を維持するうえで重要であると示唆された.その一方で,火入れ管理の効果が明確でない場合もあり,中断やその継続間隔も本種を保全する上で重要だと考えられる.