| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-007 (Poster presentation)

鳥類の繁殖地分散制限と形質による予測

*深澤圭太(国環研), 直江将司(森林総研), 赤坂宗光(農工大院・農), 角谷拓(国環研), 宮下直(東大院・農)

生物の分布適地は気候変動や土地利用変化など,人間活動に起因する環境変化によって変化するが,実際の分布域は移動分散の制約によっても規定される.一般に移動能力が高いと考えられる鳥類でも,繁殖地選択において出生地に回帰する傾向が知られており,分布縮小リスクを評価するには生息適地の変化に加えて,繁殖地分散制限を明らかにする必要がある.また,それらのパラメータを形質から予測することができれば,分布情報の少ない希少種についても将来の分布縮小リスクを推定できるようになると考えられる.

そこで,本研究では第2回(1978年),第6回(1998-2002年)自然環境保全基礎調査で得られた鳥類126種の2時点の繁殖分布を対象に,距離依存の移動分散と局所個体群の絶滅で分布動態を記述する「ハビタット散布同時モデル」のパラメータを最尤法により推定し,生息適地に影響を与える環境要因の効果と,移住確率の距離依存性を明らかにした.そして,反応変数の推定誤差を考慮したPhylogenetic Generalized Least Square(PGLS)法により,種ごとのパラメータと形質(渡り性,食性,サイズ等)との関係を明らかにした.

その結果,約24年間における50%確率移住距離が20km未満と推定された種は85種にのぼり,多くの鳥類の分布に分散制限が影響していることが明らかになった.また,38種が気温上昇により,25種が水田-森林境界長の減少により生息適地が縮小すると推定された.形質との関係解析では,渡り鳥ほど移住距離が短いという結果が得られた.このことは,渡りに要する長距離移動能力と繁殖分布拡大速度は一致しないことを示している.


日本生態学会