| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-013 (Poster presentation)
ユスリカは国内に約1500種生息し、淡水域を中心に広く見られる。生態系の中で重要な餌資源であるだけでなく、水質指標生物としても注目されてきた。ユスリカの種同定は主にオス成虫の形態で行うが、種数の多さや、成虫寿命の短さ、採集が容易な幼虫は形態が酷似している等の点から種判別が困難だった。そこで発表者らは、ユスリカの種同定をDNAバーコーディングで行うために、2014年からユスリカ標本DNAデータベースを公開している(http://www.nies.go.jp/yusurika/index.html)。信頼性の高いデータベースを構築するため、形態学的基準に基づいてユスリカ標本を種同定し、同一の標本からDNAを抽出して、ミトコンドリアDNAのCOⅠ領域の塩基配列を決定している。これまで、標本を破壊せずに細胞溶解バッファーに浸し、溶出させたDNAについて目的の領域を増幅し、塩基配列情報を得てきた。この手法は、標本の取り扱いが簡便であり、DNA抽出後でも、同一の標本について再分析が可能な上、費用も安価なため、大量サンプルを取り扱うのに向いている。しかし、この抽出産物は未精製の不純物が多く含まれるため、サンプルの状態によっては、塩基配列が得られないことや、抽出DNAの長期保存に適さないといった問題点があった。
今回、これらの問題点の解決のため、DNA抽出・精製方法、プライマーなどの条件を検討した。霞ヶ浦で採取したユスリカ幼虫のエタノール液浸標本18個体で試したところ、従来の手法では7個体であった塩基配列取得数が、新しい条件を組み合わせることによって16個体に増えた。また、これらの条件によって、DNA抽出にとって保存状態が好ましくないとされる古い成虫の乾燥標本で、粗抽出では塩基配列が得られなかったサンプルから塩基配列情報の取得が可能かについて調べた結果についても報告する。