| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-024 (Poster presentation)
湖沼や河川などの水域の生物調査は、主に形態分類に基づく捕獲や目視によって行われてきた。次世代シーケンサー(next generation sequencer, NGS)の登場により、採取した水から抽出されるDNA(環境DNA)から、そこに生息する多様な生物の塩基配列を大量に解析することも可能となった。そこで我々は、NGSによる環境DNAの解析を生物多様性の長期モニタリングに応用することを目的とし、DNA抽出用のサンプルの違いが検出される種や生物分類群に与える影響について検討を行った。調査地は、30年以上にわたって国立環境研究所で水質と生物モニタリングが行われている霞ヶ浦の3地点とし、2013年8月に採水を行った。採水した湖水は、(1)メンブレンフィルターもしくはガラス繊維フィルターでろ過、または(2)遠心分離で沈殿、した上で、フィルターまたは沈殿物から環境DNAを抽出した。各環境DNAについて、一般に動物の塩基配列情報が充実しているミトコンドリアCOI遺伝子領域をターゲットとし、動物ユニバーサルなプライマー(Folmer et al. 1994)でPCRした増幅産物について、IonPGMを用いて解析した結果を比較した。
フィルターと沈殿物の各環境DNAから検出された配列は、いずれもデータベースに登録のないものが優先した。しかし、門以下の同定ができたものに限ってcontig数を比較した結果、フィルターDNAでは輪形動物、遠心DNAでは節足動物(ユスリカ科昆虫)が優先した。フィルターからは主に動物プランクトンなどの微小な生物体のDNAが抽出され、沈殿物からは浮遊している組織片等のDNAも得られていると考えられた。霞ヶ浦に個体数が多く生息する魚類など、今回検出できなかった生物分類群については、モニタリングに適したプライマーや抽出方法についてさらに検討していく必要がある。