| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-036 (Poster presentation)

ヌマエビ類と体表共生性ヒルミミズ類の分布と両者の関係

田中薫子・*和田恵次(奈良女子大),浜崎健児(大阪府立環境農林水産総合研)

エビヤドリミミズHoltodrilus truncatus (Liang, 1963)(環形動物門;環帯綱)は、日本では兵庫県の河川と沖縄県宮古島の湧水から、ヌマエビ類の体表共生者として報告されていたが、近年紀伊半島の河川からも、ヌマエビ類に付いて見つかるようになった。本研究では、エビヤドリミミズの紀伊半島の河川における分布状況を明らかにするとともに、エビヤドリミミズ付着の有無が宿主の体サイズと抱卵数に及ぼす影響、および、エビヤドリミミズの塩分耐性と宿主種への選好性を検討した。

紀伊半島内でエビヤドリミミズが分布する河川は、調査した26河川中、半島南西部から北東部までの10河川に限られた。宿主は、ヌマエビParatya compressaが大半を占めたが、河川によっては、ミゾレヌマエビCaridina leucostictaやヤマトヌマエビC. multidentataなどにも付着が見られた。エビヤドリミミズの流程分布は、宿主種のヌマエビが下流から上流まで幅広く分布するのに対して、中流から上流までに片寄っていたが、これは、エビヤドリミミズの塩分耐性実験から得られた塩分に対する際立った弱さに起因するものと思われた。エビヤドリミミズの付着したヌマエビは、付着していないヌマエビよりも体サイズが大きい傾向にあったが、ヌマエビ雌の抱卵数には、付着の有無による違いはみられなかった。エビヤドリミミズの宿主種への選好実験からは、野外で最も多く付着しているヌマエビに対する選好性が、ミゾレヌマエビやヤマトヌマエビよりも強いことが示された。


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