| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-042 (Poster presentation)
異地性のエサ生物が増加することは、捕食者の増加や行動変化を介して自生性のエサ群集にも影響を与えている。そこで、異地性エサが供給される生態系では、群集の成り立ちを理解する上で、捕食者による異地性エサの利用率を決める要因を明らかにする事が重要である。
有機物のΔ14C値は光合成時の大気Δ14Cレベルを反映する。大気CO2中のΔ14C値は、大気核実験の禁止後に減衰を続けており、そのため、生産年代の違いに起因して、腐食連鎖由来の生物のΔ14C値は生食連鎖由来の生物に比べて高い。そこで、捕食者のΔ14C値を腐食連鎖由来のエサ利用を示す指標として利用できる。
本研究では、異地性資源流入の例として、円網造網性クモ類による腐食連鎖由来のエサの捕食を題材とし、その変化要因として重要な捕食特性を解明することを目的にΔ14C分析を行なった。また、若齢林・老齢林それぞれ3調査地を選定し、クモとエサ群集の双方が大きく異なる環境においてパターンを比較することで、捕食者の特性と腐食連鎖由来のエサ利用率の関係に一般性が見られるかを検討した。
若齢林では小さいクモほど高いΔ14C値を示したが、腐食連鎖由来エサの利用に於ける体サイズ依存性は老齢林では見られなかった。また、水平—垂直円網タイプのクモ間にΔ14C値の違いは見られなかった。結果から、捕食者の体サイズによって腐食連鎖起源のエサの利用率が決定していたことが示された。また、腐食連鎖起源のエサが豊富に存在すると考えられる老齢林では、得られるエサのほとんどが腐食連鎖由来であることにより、形質に応じたエサ選択が見られなかったと考えられる。このように、生食・腐食連鎖由来のエサ群集が共に存在する場合に、捕食者の体サイズの違いが異地性エサの利用率に影響を及ぼすと結論づけられた。