| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-043 (Poster presentation)
撹乱は群集の状態を変化させる主要因であり、降雨や洪水、地震などの自然現象や人為的な生息地改変など、規模や区分は様々である。生物群集の撹乱に対する反応の把握は、群集形成機構や群集の安定性の解明に有用なため、撹乱を受けた環境では様々な調査研究が行われてきた。
2011年3月11日に発生したM9.0の巨大地震に伴う津波は、東北地方の太平洋沿岸地域に大きな人的、社会的、経済的および生態学的な被害を及ぼした。この津波により浅海域、干潟、海岸、水田などの沿岸生態系は大きな被害を受けたことが報告されている。宮城県では、2011年の津波により、県内の約11.5%(12,685ha)の水田が津波浸水被害を受けた。しかし、震災直後から除塩やがれき除去などの人為的な復旧作業が行われたことにより、2013年度までに県内の被害水田の約58%が復旧され、作付けが再開された。水田は、稲作の場であると同時に、安定した季節変動をする一時的水域という側面を持っており、多様な動植物を擁していることが近年の研究で明らかにされつつある。本研究では、水田動物群集に対する津波撹乱の影響、群集の回復プロセス、そのプロセスに影響する要因を明らかにすることを目的として、宮城県沿岸域の水田地域で水田動物群集の野外調査を行った。
その結果、津波浸水被害を受けた水田も、復旧されることにより、水田動物群集の生息地としての機能も速やかに回復することが明らかになった。ただし、動物群集そのものの回復は、個々の種の分散様式により侵入・定着率が異なるため、概ね3年はかかることが示唆された。本発表では、個々の種の侵入・定着率に直接・間接的に関与すると考えられる周辺の土地被覆および地形が、水田動物群集の回復プロセスへ与える影響について考察する。