| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-048 (Poster presentation)
繁殖干渉は、主に近縁他種による誤った配偶行動を受けることにより適応度が低下する現象を指し、幅広い分類群で多くの観察例が見られること、資源競争に比べて相手種の絶滅を容易にそして速やかに引き起こすことから、生物の分布や群集構造を説明する要因として、注目が集まりつつある。すでに、生物の個体数や分布をはじめ、体サイズや資源利用の進化などの生態学的現象を説明できることが報告されているが、希少野生生物の保全生態学分野へ繁殖干渉理論を適用する試みは未だなされていない。
ナゴヤダルマガエル(Pelophylax porosa brevipoda)は近年個体数を大きく減少させ、環境省レッドリストにおいて絶滅危惧IB種に指定されている。近縁種のトノサマガエル(Pelophylax nigromaculatus)とは大域的には分布が重なっているが、局所的なスケールでは生息地の棲み分けが見られ、両種の分布境界では種間交雑が起こっている。
本研究では、シミュレーションモデルを作成することにより、トノサマガエルがダルマガエルに与える繁殖干渉が、両種の分布境界の移動や雑種個体の広がり、遺伝子浸透の進み方に与える影響を調べた。2n=26の遺伝子座をもつ二倍体の個体を想定し、これらの個体が一次元格子上で成長・繁殖・分散を繰り返すモデルを作成した。遺伝子座の一部を(雑種)個体の適応度に関わるものとし、残りを中立な遺伝子とすることで遺伝子浸透の観察を行った。そして、交配前の繁殖干渉がなく、種間で見境なくランダム交配する状況を基本モデルとし、繁殖干渉がある場合との比較を行った。また、撹乱要因もモデルに組み込み、繁殖干渉との相互作用効果についても検討を行った。