| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-049 (Poster presentation)

食肉目2種の近接する溜め糞場における動物相について

*松野壮太,倉本宣 (明治大 農)

ホンドタヌキNyctereutes procyonoides viverrinusとニホンアナグマMeles meles anakumaは里山生態系を代表する食肉目の哺乳類である。2種は「溜め糞」とよばれる一定の場所(溜め糞場)に複数個体が排泄する行動をもつ。調査地において、2種の溜め糞場が近接して形成されていることが確認された。

哺乳類の糞は、分解者である土壌動物や糞虫によって餌資源・生息場所として利用される。これらの動物はネズミや鳥類によって採食される可能性があり、糞周辺では多様な生物群集が形成されていると考えられる。

そこで本研究では、2種の溜め糞場の利用状況と溜め糞場を採食の場として利用する動物相を明らかにするために、2014年5~12月にかけてカメラ調査を行った。

2種の溜め糞場の利用状況について、タヌキは溜め糞場に34.7±23.4秒間滞在し、利用頻度は秋になるにつれて増加した。観察例より、個体間で情報交換するために利用することが明らかになるとともに、必ずしも共同利用を許容しないことが示唆された。アナグマは溜め糞場に28.2±26.9秒間滞在し、利用頻度は7月に最も高く、その後低く推移した。滞在時間は5~8月の方が9~12月より長くなった。7~8月にかけて乳腺が発達した個体と仔とみられる個体が確認され、今回確認された溜め糞場は育児期において多く利用されることが明らかとなった。

溜め糞場を採食の場として利用する動物相について、ネズミと鳥類において採食行動が確認された。ネズミでは2種の溜め糞場において、昆虫を主要な餌資源とする時期で昆虫の採食が確認された。鳥類ではタヌキの溜め糞場においてのみ、秋から冬にかけて地上採食性の種でダンゴムシの採食が確認された。これらのことから、2種の溜め糞場を採食の場として利用する動物の存在が明らかとなった。


日本生態学会