| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-051 (Poster presentation)

水域-陸域境界域での節足動物群集の季節変動:水上ピットフォールトラップによる評価

*高木俊(兵庫県博), 中西奈津美, 鏡味麻衣子(東邦大・理)

生態系の境界域における生物や物質の移動は、相互の群集動態を理解する上で重要な視点である。系間の生物の移動には境界の物理構造が大きく影響することが知られており、生態系の境界域に成立する植生の種類の違いや季節変化は、生物の移動を通じた動物群集の動態にも影響することが予想される。本研究では、異なる水生植物帯を有する湖沼沿岸湿地帯において、水域-陸域境界域での節足動物群集の季節動態に着目した。調査地とした印旛沼は、陸域-水域移行帯にヨシ-ヒメガマ群集が広く成立しているが、近年はヒシやオニビシなど浮葉植物の優占に伴い、ヨシ-ヒシ群集が成立している場所も見られる。ヒメガマ帯やヒシ帯はクモなどの表層徘徊性動物の足場や植食性昆虫の餌資源として利用されているが、枯死や繁茂の過程で物理構造が季節的に大きく変化する。

演者らは、陸域のヨシ帯と水域のヒメガマ帯あるいはヒシ帯を移動すると考えられる徘徊性動物を対象とし、これらの生物を効率的に採集可能な水上ピットフォールトラップを用いた動物群集の調査を行った。2013年6, 7, 8, 9, 11月および2014年1, 3, 5月にヨシ-ヒメガマ移行帯とヨシ-ヒシ移行帯において、水域-陸域境界から水域側0, 2.5, 5, 10 mおよび陸域側2.5, 5 mの位置にトラップを設置し各1週間の採集を行った。水域ではアメンボなどの表層性の水生昆虫が採集されたほか、水域・陸域に共通して湿地性コモリグモ類が多く採集され、特に水域側ではキバラコモリグモ・キクヅキコモリグモ・ニセキクヅキコモリグモの3種が多かった。ヨシ-ヒシ移行帯では、ヒシ繁茂期には主に水域側で採集されたクモ類が、枯死期には陸域側で採集された。発表では、植生間での動物群集の組成と季節変化を比較し、植生構造の季節変化に伴う動物群集の季節動態を考察する。


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