| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-054 (Poster presentation)
河川では、一般に年平均水温は上流から下流に向かって低くなる。外温性の生物にとってこうした温度勾配は、基礎代謝速度や摂餌効率の変化を介して個体のエネルギー収支に直結する要因である。そのため、各生物種の呼吸量や摂餌速度の水温依存性といった生理特性は、生息場所選択や環境適応の結果を反映して、その種の河川での分布や行動特性と強く対応すると予想される。このことを検証するため、本研究では、河川流程分布と摂餌特性の異なる6魚種について、呼吸量と餌の消化速度の温度依存性の測定および温度条件の異なる各季節での野外における摂餌量推定を行った。その結果、餌の消化率は全体として底生魚よりも遊泳魚の方が高く、遊泳魚1種を除き、それぞれ水温の低い上流域に生息する魚種の方が、下流域の種よりも高いことが分かった。さらに、寒冷地に近縁種が多い北方系の2魚種は、低水温条件で他魚種より顕著に高い消化率を有していた。この種間差を反映して、野外での胃内容物量と各季節の消化率から推定された1日あたりの摂餌量は、特に低水温環境で顕著な魚種間の変異があることが示唆された。一方、呼吸量では消化率で見られたような顕著な種間差は観察されなかった。これらの結果は、魚類群集の河川上流・下流方向に沿った種組成の変化の少なくとも一部は、各魚種の異化・同化に関わる生理特性のトレードオフによって説明されうることを示している。また、河川食物網における捕食者として魚類を見た場合、特に低水温条件下において摂餌速度が顕著に他魚種よりも大きい種が存在することから、こうした種の有無は下位栄養段階の生物に対する捕食圧の季節動態を河川間で全く異なるものにすると考えられる。