| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-069 (Poster presentation)
捕獲圧の増減によって個体数が変動する動態モデル(以下、ハーベストモデル)を用いた個体数推定は、ニホンジカなど捕獲を行っている生物種の個体数推定手法の主流になると期待されるが、データによっては非現実的な推定結果を生み、個体数管理に混乱を招くことが懸念される。本研究では、北海道振興局スケール(約3000~11000km2)とメッシュスケール(約5km×4.6km)で集計した1994-2012年の狩猟努力量当たりの目撃数と捕獲数にハーベストモデルを適用し、その推定結果からハーベストモデルの適用可否を検討した。振興局スケールについて、推定値が収束した14振興局のうち11(79%)で妥当な推定密度が得られた。一方、メッシュスケールでは推定値が収束した1,628メッシュ(対象メッシュの81%)の内24メッシュでは120頭/km2を越え、非現実的な推定密度となった。これらの経年変化は(a)低密度から指数関数的増加、(b)推定のスタート年から高密度状態で最近年に更に急増、に分けられた。(a)については捕獲数が非常に少ないメッシュで見られ、ハーベストモデルの原理である捕獲圧が低かったために、密度の上限値に制約がかからなかったと考えられる。一方(b)については捕獲数が非常に多いメッシュで見られ、推定作業上個体群が絶滅しないように捕獲数の大きさに合わせて密度が過大推定されたと考えられる。該当メッシュは越冬地として知られ、捕獲が集中した可能性がある。振興局スケールでは妥当な推定密度が得られたことから、適用する空間スケールに配慮することで解決する可能性がある。したがって、管理状況やその生態に配慮した個体群動態モデルを探索し続けることが、個体数管理に重要であると考えられる。