| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-078 (Poster presentation)
サケ科魚類サクラマスOncorhynchus masouは極東地域にのみ分布し、北日本地域の重要な水産資源となっている。これまでの研究から本種は母川回帰性を有し、河川毎もしくは同一河川内の異なる支流毎に固有の遺伝的特性を有していることが示唆されている。サクラマスでは、その水産資源としての重要性から、これまで人工種苗放流が広く実施されており、放流魚による遺伝的汚染などが懸念されている。そのような遺伝的影響を把握するためには、まず野生集団における詳細な遺伝的特性の把握が不可欠であるが、サクラマス野生集団を対象とした研究はあまり報告されていない。本研究では、これまでに放流事業が実施されていない17河川を対象とし、北海道におけるサクラマス野生集団の遺伝的構造の解明を行った。サンプリングは2012年から2014年に行い、解析にはマイクロサテライトDNA 17遺伝子座を用いた。解析の結果、北海道のサクラマス集団は大きく2つのグループ(日本海側・噴火湾グループ、太平洋・オホーツク海グループ)に分かれることが明らかとなった。また、各グループ内の河川間も含め、全ての河川集団間に有意な遺伝的差異が認められた。一方、遺伝的距離と地理的距離との間に相関関係は認められなかった。本発表では、この様な遺伝的構造の形成要因について考察する。