| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-079 (Poster presentation)
動物の体色には、種内で変異・多型が見られる事がしばしばある。このような体色変異と様々な生態的特徴の関連を明らかにする事は、変異の進化や維持メカニズム、さらには種分化といった様々な現象を理解するうえで重要である。
さて体色の機能や生態学的効果を考えるときに、生息場所の光環境は重要な要因といえる。光環境は温度耐性、また視覚コミュニケーションを通じた他個体との関係を通じて適応度に影響すると考えられるからである。このことから、光環境から動物が受ける制約は体色によって異なると考えられ、体色と生息場所の光環境との間に対応関係が見られる事が予測される。
造網性クモの一種であるギンメッキゴミグモCyclosa argenteoalbaの腹部背面は銀地に黒の斑点を持ち、斑点部分の全体に占める割合が個体によって20-100%まで変異する種である。先行研究から、本種では黒色部比率と造網場所選択に関係がある事が示されており、黒色部の大きな個体は直射日光の当たらない場所に造網場所が制約されているのに対し、銀色部の大きな個体は様々な光環境の場所に造網する。本研究では、このような造網場所選択の種内変異がが光環境による制約の結果であるという仮説を検証する事を目的とする。
このために、本研究ではギンメッキゴミグモと同属のゴミグモCyclosa octotuberculata、ギンナガゴミグモCyclosa ginnata、ミナミノシマゴミグモCyclosa confusaの三種を用いて光環境と体色との関係を調査した。三種のうち、ゴミグモとギンナガゴミグモは体色の種内変異がほとんど見られない種だが、ミナミノシマゴミグモは変異のある種である。これらのクモの造網場所における直射日光暴露時間を推定し、種間比較およびミナミノシマゴミグモの種内での比較を行ったのでその結果を報告する。