| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-083 (Poster presentation)
哺乳類の生息密度推定には、自動撮影装置を用いた標識再捕獲法が広く使われているが、外見から個体識別が可能な種にしか適応でないという問題があった。しかし、個体識別を必要としない自動撮影を用いた生息密度推定方法であるランダムエンカウンターモデル(REM)が提案され、有蹄類において有効であることが報告された(Rowcliffe et al. 2008)。そこで本研究では、外見での個体識別が困難なイリオモテヤマネコの生息密度推定におけるREMの有効性について、ラジオ・トラッキングによる行動圏を用いた生息密度推定との比較により検証を行った。西表島北部沿岸地域において、2012年10月から1年間、500m間隔でライン状に24台の自動撮影装置を設置した。また、ヤマネコの定住個体7個体に発信機を装着し、行動圏の推定を行った。各カメラの半径250mのバッファーを調査範囲とし、行動圏が重複した定住個体の生息密度は1.69個体/km2となった。自動撮影で確認されたヤマネコは発信機の装着有無によって分類し、REM用いて算出した発信機有個体、不明個体の生息密度はそれぞれ0.95個体/km2、0.92個体/km2、発信機有個体と不明個体を合わせた生息密度は1.87個体/km2だった。行動圏から求めた生息密度は、REMによって算出した発信機有個体の生息密度と、発信機有個体と不明個体を合わせた生息密度の間の値を示した。また、各値に大きな差がみられなかったことから、イリオモテヤマネコの生息密度推定においてREMは有効であると考えらえた。また、自動撮影装置の設置間隔によって、算出される生息密度には大きな差が生じることが確認されたため、イリオモテヤマネコの生息密度推定に最適な自動撮影装置の設置方法について検討を行った。