| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-090 (Poster presentation)
北アルプス立山地区はライチョウの生息密度が日本で最も高く,300羽余の生息が確認されている.ライチョウは盲腸を持ち植物食に適応し,無雪期は高山植物の葉や果実を主な餌とし,種子散布に及ぼす重要な役割も明らかにされている.餌資源として重要なガンコウランやコケモモなど8種類の木本植物の結実について2006年間からモニタリング調査を行った結果,いずれの種でも現地の平均気温と結実量の間には負の相関が確認され,温暖化が進行した場合のライチョウの餌資源への悪影響が示唆された.
ライチョウの摂餌,消化効率と高山植物の必要資源量を明らかにするために,摂餌する主要植物の水分量・可溶性有機物量,及び野外の新鮮な糞の含水率や含有成分,含有種子数を測定し,ライチョウ1羽が必要とする植物バイオマス量の推定を行った.果実や葉の推定吸収率は植物種で異なり49~84%となった.ガンコウランの葉は含水率が高く,水分量と可溶性有機物量とのバランスも良く,葉面積あたりの質量も他の植物に比べて大きかった.また,夏から秋にかけては栄養価の高い果実をつけるため,ガンコウランはライチョウにとって重要な摂餌植物であることが再確認された.
ガンコウランの葉の含水率から必要摂餌量を推定したところ,約60g/dayとなった.ライチョウの食痕から1回についばむガンコウランの葉面積は平均0.17cm2と推定され,1回のついばみ当たり約4.6mgの水分を摂取できると推定された.水摂取から推定されるガンコウランの摂餌葉面積は約1100cm2で,6700回程度ついばむ必要があるが,これは,既存の観察値とほぼ一致した.ガンコウランの平均葉面積指数は2.6m2/m2で,1日に必要なガンコウラン群落は430cm2となり,この値はエネルギー必要量から算出された結果とほぼ一致した.