| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-092 (Poster presentation)

サクラマスにおける河川内の卵サイズ変異と河川環境との関連性

*山本俊昭(日獣大),北西滋(岐阜大)

卵サイズは、成長様式や産卵環境など様々な生物的・非生物的要因が影響し、長い時間の中で獲得した形質であると考えられている。本研究では、サケ科魚類のサクラマスを用いて同一河川内における支流間の卵サイズ変異に及ぼす要因を明らかにすることを目的とした。調査は、北海道中西部に位置する厚田川の6支流にて行った。本河川は、過去に養殖魚が放流された経緯はなく、魚類の移動を妨げる工作物がないため、人為的な影響は極めて低い河川である。2003年から2014年までに6支流で成熟雌193個体(体長:47.31±4.71cm)を捕獲し、卵サイズ(卵重/10粒)を計測した。また、成熟雌180個体において外部形態(尻鰭や尾鰭など)の計測を行った。さらに、産卵床の礫サイズ、卵を埋めた場所の深さなどの非生物的要因と、各支流の成長率などの生物的要因を計測した。そして、これら要因と卵サイズ間を解析した結果、産卵床の礫サイズが小さい支流ほど卵サイズが大きく、かつ深い場所に卵を埋める傾向があることが示された。また、産卵床の礫サイズが小さい河川ほど尻鰭および尾鰭が大きくなる傾向も示され、産卵場所の環境が卵サイズおよび外部形態に強く影響していることが示唆された。一方で、稚魚期の成長や水温などと河川内の卵サイズ変異に相関は認められなかった。礫サイズが比較的小さい河川においては、卵の表面積を大きくすることで溶存酸素を効率よく得ることができ、ふ化するまでの生残率を高めているのではないかと考えらえた。これまでサケ科魚類の卵サイズ変異に関する研究は多く行われており、礫サイズは卵サイズと正の相関があることが示されているが、本研究では正反対の負の相関が得られた。本発表では、いくつかの理由を考察したい。


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