| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-096 (Poster presentation)
宿主が共生生物を育てて食べる栽培共生は、複数の動物で独立に進化している。宿主は、農園を作り、共生生物を作物として栽培することで、食物を狭い範囲で大量に安定的に得ることができる。それにより、これまで利用不可能だった競争者のいない/少ない資源を利用可能となり、ニッチを大きく拡大できる。ハキリアリなどの社会性昆虫に見られる最も発達した栽培共生「農耕」や人間の農耕は、高い生産性が実現され、栽培共生の最も成功した例と捉えることができる。これらは生態系においても影響力の強い極めて重要な地位を占める。
しかしながら、農園の維持には多大なコストがかかる。作物は病害の影響を受けやすく、病害対策が不可欠である。人間だけでなく、社会性昆虫なども病害に悩まされている。これまで、栽培共生における病害に関する研究は、主に「農耕」を営む社会性昆虫-菌共生系が対象とされ、非社会性昆虫におけるそれは知見に乏しいのが現状である。
我々は、近年発見された非社会性昆虫ニホンホホビロコメツキモドキ-酵母栽培共生系を対象に、病害の存在を調査した。宮崎県において、ニホンホホビロコメツキモドキの産卵痕のあるメダケの節間を採取し、節間空洞内より微生物の分離を行ったところ、酵母だけでなく非共生菌である糸状菌が検出された。糸状菌と酵母を対峙培養すると、糸状菌が蔓延し、酵母の増殖が阻害された。ニホンホホビロコメツキモドキの幼虫に糸状菌をエサとして与えたところ、幼虫の成長が阻害された。以上の結果により、本共生系も病害に悩まされていることが示唆された。本発表では、病害対策についても考察したい。