| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-102 (Poster presentation)

鳥のフンに化ける幼虫:体曲げは捕食回避に有効か?

*櫻井麗賀(兵庫県大),鈴木俊貴(総研大・先導科学)

動物は捕食を回避するために様々な形態や行動を進化させている。そのひとつに、食べられないもの(鳥の糞や石、枝など)に姿を似せることで捕食を回避する「擬装(masquerade)」がある。擬装に関する研究は近年活発に行われており、これまでに擬装する餌生物とそのモデルとなる対象物における色と大きさの類似性と捕食回避効果の関係が論じられてきた。しかしながら、一部の動物では特定の“ポーズ”を取ることでモデルに姿を似せているようにみえる。例えば、スカシカギバとオカモトトゲエダシャクなどの蛾の幼虫は白色と黒色の体色を持ち、さらに休息時に体を曲げることで鳥の糞にそっくりな見た目になる。本研究ではこれらの幼虫が体曲げによって捕食回避の効果を得ているのか検討するため、野外実験をおこなった。白色と黒色を組合わせたフン色と緑色(コントロール)の幼虫モデルを作成し、さらにこれらを真っ直ぐと曲げの2つのポーズに形成した計4種類のモデルを木に置いて、各種のモデルにおける鳥からの攻撃率を調べた。その結果、緑色の幼虫モデルではポーズ間で被攻撃率に有意な差はみられなかった。これは幼虫が体を曲げるだけでは捕食回避効果を高められないことを示している。一方で、フン色の幼虫モデルでは真っ直ぐなモデルよりも曲がっているモデルの方が被攻撃率は低かった。これらの結果はフン色の幼虫が体を曲げることで、鳥の糞に姿を似せて捕食を回避していることを示している。本研究は色や大きさに加えてポーズも擬装の効果を高めることを明らかにした初めての例である。


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