| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-104 (Poster presentation)

入れ替え実験によるコメツキガニとチゴガニの分布要因の検証

*藤谷あかね,木村妙子(三重大院・生物資源)

コメツキガニScopimera globosaとチゴガニIlyoplax pusillaは,日本沿岸の干潟に優占する小型のカニ類であり,堆積物中の有機物を濾し取って摂餌する。コメツキガニは主として砂底に,チゴガニは泥底に分布している。この底質による分布の違いの要因として,コメツキガニでは有機物の濾し取り能力は高い一方,泥底に多いセルロースの分解能が低いため主に砂底に生息し,チゴガニはその逆であるため泥底に生息すると考えられてきた。本研究ではこの仮説の検証のため,野外でケージを用いた底質入れ替え実験を行い,2種の分布要因を明らかにすることを目的とした。

実験は三重県津市の田中川干潟において,2013年夏に3回行った。砂底と泥底の2地点に入れ替えケージと対照ケージを各2個ずつ計8個設置し,カニを15個体ずつケージに入れた。2週間後,4週間後に生残個体数,甲幅を測定した。また行動比較のため実験開始直後,2週間後,4週間後の干潮時に30分間隔で4時間各ケージを観察し,行動を記録した。実験終了時,腸内内容物の充満度および消化管内粒子の粒度組成を測定した。また,2014年に上記のケージ内での摂餌量推定のため,摂餌頻度の測定を行った。

ケージ実験の結果,生残率は両種ともに入れ替えケージで明らかに低下した。また行動観察の結果,コメツキガニでは入れ替えケージは対照ケージより摂餌個体の割合が低くなったのに対し,チゴガニではケージ間の差はみられなかった。一方,消化管内粒子は,両種ともに底土の粒度組成に関わらず餌としている微細粒子が約8割を占めていた。これは2種の濾し取り能力に差がないことを示している。また両種ともに摂餌頻度にケージ間の差はみられなかった。入れ替え実験により,コメツキガニは摂餌行動の制限,チゴガニは微細粒子が少ない砂底からの摂餌量の減少により,生残率が減少したと考えられる。


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