| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-106 (Poster presentation)
ハダカアリは日本の本州から沖縄までの海浜の岩場や公園などに生息し、その巣の入り口には、しばしば、他種アリの死骸が集められるのが観察される。多くのアリ種では、死骸やゴミなどはダニや病気の発生源となるため、巣場所から離れた場所にゴミ捨て場を作ることが適応的であると考えられてきた。しかし、ハダカアリの場合は、巣の入り口に集められた死骸には他種アリがそのほとんどを占めていたことから、単なるゴミ捨て場として機能しているのではなく、他種アリなどから巣を防衛する機能を果たしている可能性を示唆している。そこで、野外調査を行って、巣の入り口にある死骸の種類を同定し、その種とハダカアリの巣場所近辺に分布するアリ種との種構成の比較を行った。その結果、アシジロヒラフシアリなどハダカアリの巣場所近辺に分布しないアリ種も含まれていたことから、生息場所の広範囲から死骸を集めていることが明らかになった。また、死骸の置かれているハダカアリの巣の割合を算出した結果、巣の入り口が下方を向いている場合を除いて、ほとんど全ての巣において、巣の入り口に死骸が置かれていることが明らかとなった。そこで、死骸を集める条件について室内実験によって検証した。その結果、他種アリの死骸とエサ(ミールワーム)を明確に区別しており、さらに室内環境下で長期間飼育したハダカアリは死体収集をしないことから、他種アリの接触や攻撃などを経験してから引き起こされる行動であることが示唆された。